世界を作った直角三角定規
こんにちは。家づくりコーディネーターの原山です。
突然ですが、直角三角形という言葉、懐かしい響きですよね。
大人になって、この言葉を使う機会は少ないのではないでしょうか。
現場関係の方でしたら、
『さしご、さんしご』定規で直角をだす方法があるので
使い慣れているかもしれません。
『さしご、さんしご』とは、直角三角形の辺の比率が
3:4:5 という、ピタゴラスの定理に基づいたものです。
この『さしご』、実はピタゴラスの定理よりも昔から使われていたそうです。
測量機器のない時代に、大工さんが長さ12尺の貫板を
3尺、4尺、5尺に切り分けて作った直角三角形の道具で
古くから使われている直角を出すために使われてきた手段です。
これで柱の垂直性や、各所の直角を見定める事ができます。
建築の基礎は、直角。
直角が定まらなければ扉も閉まりませんし、
丸いものを置いたら、コロコロと動き出してしまいます。
建築の世界では直角の事を(矩:かね)といいます。
手のひらでも直角を知る方法があるのをご存じでしょうか。
親指と人差し指を、めいっぱい開いて L字をつくると
親指が約3寸(9センチ)、人差し指は約4寸(12センチ)、
もう一辺が、約5寸(15センチ)になり、直角三角形になります。
この手のひら三角形は、私たちが普段使用している
道具の大きさにも直結しています。
たとえば湯呑やそば猪口、茶筒、ビール瓶の直系などは
掴む動作に使う、人差し指と親指で開いたときの5寸の半分、
7.5センチに設計されており、
この長さが、持ちやすさの基準となっています。
このサイズよりも大きなものは、取っ手が必要になります。
しかし、日本の伝統的な汁椀の口のほとんどが12センチ前後ですが、
取っ手はありません。
実は、このサイズは両手の親指と中指で描いた
円弧の直径と同じになっています。
つまり、汁椀は両手を添えて持つものなのです。
汁椀の糸切底(底)と、椀の縁まで7.5センチなので
作法を気にせず、箸を持ちながら椀を持てるようにもできています。
片手でも持てるように、汁椀は設計されているのです。
建築物も、食器にも、その文化の源泉には人の手が関係しています。
手のひらの直角三角形が文化を作ったなんて、奥が深いですね。
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